文字って不思議です

最近、ふと「文字って不思議だな」と感じました。 同じ言葉でも、漢字やひらがなやカタカナ、どれを選ぶかで、がらりと印象が変わるからです。 その中でも、私が最近、とくに心をひかれるのが「ひらがな」です。

丸い線と、ふわっとした、かたちのせいか、言葉そのものがやわらかく、近くに寄りそってくれているように感じます。

 たとえば「有難う」と「ありがとう」は、同じ気持ちを表していても、ひらがなの「ありがとう」には、ほわんとした日だまりみたいなあたたかさがある気がします。 かしこまったお礼というより、目の前の人にそっと手を合わせるような「ありがとう」です。

 

 私には、心の中で何度も繰り返している「ありがとう」があります。

もう二度と、直接伝えることのできない人に向けた、ひらがなの「ありがとう」です。

あの時に言えなかったひと言や間に合わなかった一通のメッセージだったり、その時は照れくさくて飲み込んでしまった感謝の気持ちたちが 、あとからじわじわ浮かんできて、胸の中に、小さな「ありがとう」がたくさんたまっていきました。 

その人たちへ向けて、ひらがなのままの「ありがとう」を、そっと並べてみたいと思うのです。

たとえば、今はもう、連絡を取ることのできない人や、喧嘩をしたわけでも、嫌いになったわけでもないのに、ふと気づいたら、離れてしまった人や 事情があって、会うことも、声を聞くこともできなくなってしまった人たちです。

そういう人たちのことを思い出すとき、私の心の中には、ひらがなの「ありがとう」が静かに浮かび上がってきます。何だか「有難う」と書いてしまうと、どこか改まってしまうようで、私には少しだけ違和感を感じるのです。 

 

〈あのとき励ましてくれて『ありがとう』 一緒に笑ってくれて『ありがとう』 黙ってそばにいてくれて『ありがとう』〉

 

口に出して伝えることは、もうできませんし、 メッセージを送ることも、きっとできないでしょう。 それでも、心の中では何度でも、その人の名前を思い浮かべて「ありがとう」とつぶやくことができます。

 ひらがなの「ありがとう」は、相手に届かなくても、自分の中でやさしく響いてくれます。 会えない寂しさや、もう戻れない時間の痛みを、少しだけやわらげてくれる、小さなクッションみたいな言葉です。

もしこの世に「ありがとう」という言葉がなかったら、私はきっと、もっとたくさんの後悔を抱えていたと思います。 伝えられなかった気持ちを、どこにも置けずに、そのまま胸の奥にしまい込んでいたかもしれません。 たとえ一方通行でも、 たとえ、もう誰にも読まれないひらがなでも、 心の中で、そっと何度も書き直す「ありがとう」は、いまの私を支えてくれる、大事な祈りのような気がしています。

 

 もしかしたら、あなたの心の中にも、もう会えない誰かに向けた「ありがとう」があるかもしれません。 その想いが、どうかあなた自身の心も、静かにあたためてくれますように、 そして、よかったら、自分にも「ありがとう」を伝えてあげてくださいね。

 

ありがとうの気持ち

 

投稿者プロフィール

大野 香
大野 香くれたけ心理相談室(愛知 東浦支部)心理カウンセラー
くれたけ心理相談室(愛知 東浦支部)は、愛知県知多郡東浦町を拠点に心理カウンセリングを承っております。エリア外の皆様にも、ズームや電話等によるカウンセリングにて対応させていただいております。

ふっと一息、呼吸をしに来ていただけるよう、相談者様に寄り添い、一緒に解決策を探したり、あなたらしく歩めるお手伝いをできたらと思っています。

心理カウンセラー 大野 香

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